今回はタイトルにある通り、「育児休業給付金」をテーマにお話ししていきます。後半ではリアルな支給額や、実際に支給されるまでどれくらいの期間がかかったのかについてもお話ししていきますので、ぜひ育休中の家計管理や育休取得期間などの参考にしてください。
育児休業給付金とは?
制度について
働いているパパ・ママが赤ちゃんの育児のために育児休業を取得すると、その期間収入が途絶えてしまいます。そこで途絶えた収入を補填する役割を担ってくれるのが、育児休業給付金です。育児休業給付金は会社から支給されているのではなく、毎月支払っている雇用保険から支給されます。そのため受給対象者は、主に会社員やパートなど雇用保険に加入している人になります。
支給期間と金額
支給期間について
原則1歳までとなります。しかし、待機児童などの問題で1歳になっても保育園に入園できない場合もあります。その場合は半年ごとに最大2歳まで延長する事ができます。
金額の計算方法
育児休業給付金の計算方法は以下の通りです。
・育休開始〜6ヶ月までは賃金(休業開始時賃金日額 × 支給日数)の67%
・6ヶ月〜1歳までは賃金(休業開始時賃金日額 × 支給日数)の50%
※休業開始時賃金日額とは
原則として休業開始前の直近6ヶ月の交通費や残業手当など各種手当を含む総支給額を180で割った額(賞与や保険料は除く)
⚠️注意
育児休業給付金には上限額があります。
育休前の賃金が高い場合でも支給額には上限があり、休業開始時賃金日額は15,690円までとなります。(2025年7月時点の上限額)
例:育児休業給付金の支給上限額(30日間)
15,690円×30日×67%=315,369円
育児休業給付金は非課税
育児休業給付金は所得とみなされないため、非課税になります。そのため、社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)の支払いが免除になり、実質手取りの8割相当が受け取れることになります。
⚠️注意
育児休業給付金は、社会保険料と同様に住民税の計算対象になりません。しかし、住民税は前年の所得に対して課税されるため、育休期間中は前年に対する住民税を支払う必要があります。
育休期間の翌年は、住民税の支払いが免除もしくは減額となります。
育児休業給付金を受け取るための条件
主な条件は4つ
雇用保険に加入していること
大前提として、育児休業給付金を受け取るには雇用保険に加入している必要があります。雇用保険に加入するためには、以下の2つの条件を満たしていることが必要です。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 31日以上の雇用見込みがあること
※扶養内で働いているパートの方でも、これらの条件を満たして雇用保険に加入していれば、育児休業給付金の支給対象になることがあります。
育児休業開始前の2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
育休前の2年間で11日以上働いた月が12ヶ月以上あれば支給対象になります。
厳密には「育児休業開始日の前々月の前日を起点」として、過去2年間を見るという決まりがあります。
例:2025年7月1日から育休を取りたい場合は
2023年6月1日〜2025年5月31日までが対象期間となります。
育休中に原則働いていないこと
育児休業給付金は、育児に専念して仕事を休む人への支援が目的であるため、原則働いていない(就業していない)ことが前提条件になります。
ただし、「1ヶ月に10日以内」かつ「80時間以内」であれば支給対象になります。
⚠️注意
どちらかだけでも超えてしまうと支給対象外になってしまう可能性が高いので、働く場合は注意が必要です。
子どもが1歳になるまでに職場復帰予定であること
厳密には、1歳の誕生日の前日(厳密には誕生日の前々日※)、保育園に入園できなかったなどの理由により延長した場合は、最大で2歳の誕生日の前日(厳密には誕生日の前々日※)までに復帰する必要があり、それより遅れると給付金の支給はストップしてしまいます。
※日本の法律(民法)では、年齢は「誕生日の前日に加算される」とされているため、○歳の誕生日=その前日の終わりとカウントされます。そのため少しわかりにくいですが、「誕生日の前日までに復帰する」には実際の誕生日の前々日に復帰する必要があります。
例:2025年7月1日生まれの場合
実際の誕生日は2026年7月1日に対して、民法上は2026年6月30日の終了時点(24:00)で1歳とみなされます。この場合職場への復帰は2026年6月29日までということになります。
⚠️注意
育休開始時点ですでに退職が予定されている場合は、給付金を受け取れないようになっています。
雇用形態と条件の違い
育児休業給付金は、雇用保険に加入していて、一定の条件を満たしていれば、パート・契約社員・派遣社員でも受給可能です。
ここでは、雇用形態ごとの注意点や条件の違いについて詳しく見ていきましょう。
正社員の場合
雇用保険に加入済みで、勤務実績があれば支給対象となります。また、育休後の復帰も前提になっていることが多く、スムーズに手続きが進む事が多いです。
基本的に制度利用のハードルが最も低い雇用形態が正社員です。
パート・アルバイトの場合
週20時間以上勤務かつ31日以上の雇用見込みがあり、雇用保険に加入していれば扶養内でも給付金の対象になります。
パート・アルバイトの場合は、勤務実績(2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上)を満たしているかが最も重要になります。
契約社員・有期雇用の場合
雇用保険に加入していて、勤務実績があれば基本的に対象となります。しかし、『子どもが1歳(最長2歳)になるまでに職場復帰予定であること』を満たしている必要があるため、契約の更新予定があること(育休後に復帰できること)が前提となります。契約の終了が確定している場合は、給付金の対象外となるので注意が必要です。
派遣社員の場合
派遣元(派遣会社)との雇用契約で雇用保険に入っていれば給付の対象となります。派遣先の就業先変更があっても、派遣元との契約が続いていれば問題ありません。
給付金の申請方法と手続きの流れ
育児休業給付金は、申請しないと受け取れない制度です。ここからは、いつ・どこで・誰が申請するのか、流れをわかりやすく解説します。
いつ・どこで・誰が申請する?
いつ
育児休業給付金の申請は、原則2ヶ月に1回行います。1回目の申請は、育児休業を開始してから約2ヶ月が経過したタイミングで行うのが基本です。
例:7月1日から育休を開始した場合
7月1日~8月31日分の給付金を、9月上旬に1回目の申請として提出します。
2回目以降も、9月1日~10月31日分は11月上旬に申請、11月1日~12月31日分の給付金を、 翌年1月上旬に申請というように、2ヶ月ごとに繰り返し申請していきます。
⚠️注意
月末締めではないため、育休開始日を起算日とし、2ヶ月単位で区切って申請することになります。そのため7月15日から育休を取得した場合は、7月15日〜9月14日分を9月15日以降に申請することになります。
どこで
申請先は、原則として勤務先(会社)を通じて事業所を管轄するハローワークに提出します。
多くの場合、申請書類は会社が準備・提出してくれるので、育休中の本人が直接ハローワークに出向く必要はありません。
ただし、会社によって対応が異なる場合もあるため、育休に入る前に申請は会社がやってくれるのかを確認しておくと安心です。
誰が
基本的には、勤務先(会社)の担当者(人事・総務など)が手続きを代行して行なってくれます。
ただし、申請書に記入すべき内容(本人の署名、育児休業の予定期間、振込先口座など)については、本人が情報を提供したり記入したりする必要があります。
必要書類一覧表
書類名 | 入手先・内容 | 注意点 等 |
---|---|---|
育児休業給付受給資格確認票(※) | 会社が用意 | 給付の資格確認用。 |
育児休業開始時賃金月額証明書 | 会社が用意 | 給付額算出に使用。 |
雇用保険被保険者証 | 会社が保管(または本人が保管) | 紛失時はハローワークで再発行可能 |
出生証明書(母子手帳の写しなど) | 本人が提出 | 母子手帳の「出生届出済証明」のページをコピー |
振込先口座の通帳またはキャッシュカードのコピー | 本人が提出 | 本人名義の口座のみ可(家族名義NG) |
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) | 本人が提出 | コピー提出 |
※育児休業給付金受給資格確認票の正式名称は、「育児休業給付金受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後育児休業給付金支給申請書」
延長制度について知っておこう(保育園に入れなかった場合)
延長の申請に必要な書類
書類名 | 内容 |
---|---|
育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書 | 給付金を延長する理由を申告する書類 本人および会社が記入 |
保育所等の利用申込書の写し | 市区町村へ保育園申込みをしたことの証明 通常は本人が控えを保管(コピー提出可) |
保育所等の入所保留通知書 | 市区町村から交付される保育園に入れなかったことの証明書(コピー提出可) |
必要書類は上記表の3つです。それぞれ給付金の延長を希望する正当な理由、保育園に申込んだ事実、入園できなかった事実をハローワークに証明するための書類です。
書類の提出は会社が行なってくれる場合が多いですが、自分で対応しなければならない場合は、書類を揃えてハローワークに提出しなければなりません。また、延長の申請は1歳の誕生日の前日(実際には前々日)、再延長は1歳6ヶ月の前日(実際には前々日)までに申請をしなければならないので注意が必要です。
支給までのリアルな期間と金額
ここまで育児休業給付金に関する基本情報や、知っておいてほしいことをまとめてきました。これから育休を取る予定の方が一番気になるリアルな支給時期と金額について公開します。
支給されるまでの期間
2月中旬から育休を取得し、最初の給付金が支給されたのは6月中旬でしたので、計算すると育休開始日〜支給された日までちょうど120日後でした。そのため育休を取得すると4ヶ月前後は無給状態で生活することになります。(金銭的にも精神的にも正直かなりキツかった😢)
支給された金額
実際の支給額が481,184円でした。これは1回目の支給で2ヶ月分の金額ですので、1ヶ月あたりは約240,000円ということになります。
育休を取得する直近6ヶ月の標準報酬月額は340,000円でしたので、『育児休業給付金とは?』の【支給期間と金額】で紹介した計算方法で計算してみます。
まずは休業開始時賃金日額を求めるために直近6ヶ月の総支給額を足します。今回は非常に近い数字なのできりの良い標準報酬月額でそのまま計算します。
340,000円 × 6ヶ月 = 2,040,000円
次に6ヶ月の給料の合計を「180日」で割ると休業開始時賃金日額が求められます。
2,040,000円 ÷ 180日 = 11,333.3333…円(今回は11,333円とします。)
最後に1回目の支給は2ヶ月分になるので、休業開始時賃金日額をかけて、その67%がおおよその支給額になります。
11,333円 × 60日 × 67% = 455,586.6円
総支給額を実際の細かい数字で計算するともう少し差は縮まると思いますが、実際の支給額にかなり近い数字が求められていますね。今回の場合は実際の支給額の方が多かったですが、下回る可能性もありますのでご注意ください。
出生後休業支援給付金について
2025年4月からスタートした出生後休業支援給付金は、先ほどの育児休業給付金とは別に振り込まれます。
出生後休業支援給付金に関する記事はこちら
まとめ:育児休業給付金を正しく活用しよう
- 育児休業給付金は、加入している雇用保険から途絶えた収入を補填する役割を担っている
- 支給期間は原則1歳まで。特定の事由(保育園に入れない・病気等)に該当する場合は、半年ごとに最大2歳まで延長可能
- 育児休業給付金は非課税のため社会保険料は免除 ※前年分の住民税の支払いに注意
- 育児休業給付金を受け取るための条件は4つ
- 雇用保険に加入していること
- 育児休業開始前の2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
- 育休中に原則働いていないこと
- 子どもが1歳になるまでに職場復帰予定であること
- リアルな支給期間と金額(あくまでも私の場合の実例ですので参考までに…)
- 支給は育休開始日から120日後
- 金額は手取りとほぼ変わらず
ここまで育児休業給付金について解説してきましたが、いかがでしたか?この記事で、みなさんの育休の悩みや不安が少しでも解消できていれば嬉しいです。
長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!
参考サイト:
厚生労働省|雇用保険制度(育児休業給付)
ハローワーク|雇用保険の継続給付
育児休業給付Q&A PDF(厚労省)
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